www.youtube.com 本動画では、平成29年度春期プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問3を取り上げ、システム改修案件における単体テストの見直しと成果物の品質向上策を、設問の要求に沿って解き切るための読解手順から解説します。本問は、テスト技法の名称を知っているかどうかよりも、ウォータフォール型開発における欠陥の摘出タイミングが、手戻り工数と品質の両面にどう跳ね返るかを理解し、品質データに基づいて管理目標とリスクを説明できるかを問う構成です。採点講評の観点でも、場当たり的にテストを増やすのではなく、指標の意味を踏まえた管理と、原因分析から次の改善策へつなげるPM視点の一貫性が重視されます。 まず状況設定として、D社では単体テストで摘出されるべきバグが結合テストで発見される、いわゆる“バグの見逃し”が増加しており、E課長が単体テストのやり方を見直します。ここでの読解ポイントは、問題が指摘している本質が「バグが多いこと」そのものではなく、「摘出される工程が遅れていること」にある点です。ウォータフォールモデルでは後工程ほど変更の影響範囲が広がり、修正・再テスト・再結合の手戻りが連鎖しやすくなります。したがって、単体で落とすべき欠陥が結合で顕在化すると、テストの効率が低下し、工程遅延リスクが増すという因果を、設問の答案として短く明確に書けるかが重要になります。採点の分岐点は、単に「後で見つかると大変」ではなく、なぜ大変なのかを手戻りと効率低下のメカニズムとして説明できるかです。 設問1・設問2では、単体テストの見直しに関連してテスト方式と運用判断が問われます。内部構造に基づいてテストケースを作る手法はホワイトボックステスト、利用者視点で外部からの入出力に基づいて作る手法はブラックボックステストであり、用語そのものは基本事項ですが、本問ではこれを単体テスト改善の文脈で使わせる意図があります。つまり、どの観点でテストケースを増強すべきか、欠陥の性質によってどちらの観点が効くのかを、問題文の状況に結び付けて理解しているかが問われています。また、テスト中断の判断に関しては、本文中の「ある種のバグ」が、後続のテストが実行できなくなるタイプの欠陥を指すことを読み取る必要があります。例えばタイミング誤りなどで異常終了してしまうような欠陥が残ったままだと、以降のテストケースを回せず、テストの進行自体が止まり、結果として効率が落ちます。だからこそ一時中断して修正を優先する、という運用判断の合理性を、単なる精神論ではなく“テスト実行可能性の確保”として説明するのが得点の核になります。ここで曖昧に「重大なバグだから」などと書くと、問題文の意図に沿った具体性が不足し、採点講評が求めるPMの判断根拠として弱くなりがちです。 さらに本問では、結合テストケースを作成するタイミングが単体テスト完了後である点が与えられており、これも単なる手順の暗記ではなく、手戻り抑制の観点での意図を説明できるかがポイントになります。内部設計後に設計ミスが見つかって修正が入ると、内部設計書は更新されます。結合テストケースを早い段階で作ってしまうと、古い設計書を前提にしたテストケースが残り、後で作り直しが発生します。したがって、最新の内部設計書を使って結合テストケースを作成し、手戻りを減らす意図がある、という筋を、問題文の流れと矛盾なく書くことが重要です。採点講評のPM視点では、テストは“量”ではなく“変更に追随した整合性”が品質と効率の両方に効くため、その理解が問われています。 設問3では、品質管理目標の設定と遅延リスクの説明が中心になります。ここでの難所は、テストケースを追加したことによりバグ摘出数が増えることを前提に、管理目標の指標をどう扱うかです。単純に「バグ密度が高いから危ない」と言うだけでは、テスト強化の効果と混同します。テストケースを充実させると、今まで見逃していた欠陥が顕在化するため、摘出数が増えることは一定程度“良い兆候”でもあります。一方で、摘出数が増えれば修正・再テストの工数が増えるため、スケジュールへの圧力も増します。この二面性を理解した上で、管理目標の設定時には単位ステップ数当たりのテストケース追加量を考慮する必要がある、という論点が採点上の要所になります。遅延リスクの根拠としては、表の品質状況からバグ密度を算出し、例えば12kステップで180件なら15件/kステップとなり、管理目標上限である12件/kステップを超えているため、修正工数増大による遅延リスクを懸念する、という定量根拠を明確に示すのが王道です。ここで計算を誤る、あるいは上限値との比較を書き落とすと、PMとしての状況判断が“印象”になってしまい、採点講評が求める説明責任の観点で弱くなります。 設問4は、テスト完了後の分析結果を次の改修へ反映する、いわばプロセス改善・再発防止の設問です。分析結果から、内部設計工程で既存の内部設計書の改訂箇所および新規作成箇所の特定に漏れがあったという課題を拾い、その原因がどこに潜むかをPM視点で整理し、レビュー内容として何を追加すべきかを具体化する必要があります。解答の核は、外部設計書と内部設計書の対応関係の確認状況をレビュー対象に加える、という“抜けを検出できる観点”を示すことです。単に「レビューを強化する」「チェックを増やす」では改善策として抽象的で、なぜ漏れが防げるのかが説明できません。対応関係の確認をレビューに組み込むことで、外部設計の変更が内部設計へ確実に反映されているか、既存設計の改訂が必要な箇所が網羅できているかを検証でき、結果としてテストで顕在化する欠陥を前工程で抑えられる、という因果で書けると、採点講評が意図する“原因分析から対策へ”の流れが成立します。 本問が示すPMとしての教訓は、品質を上げるとは単にテストケースを増やすことではなく、適切な工程で適切な種類の欠陥を、適切な量だけ摘出できる状態を作ることだという点にあります。単体テストで落とすべき欠陥が結合テストへ流出しているなら、品質問題であると同時に工程設計の問題であり、手戻りを通じてスケジュールへ直撃します。一方で、テストを強化して欠陥が多く見つかるのは、品質が悪化したというより、見えていなかったリスクが顕在化した可能性もあるため、指標の読み方と管理目標の置き方が重要になります。そして、最終的にはテスト結果の分析から、設計工程の漏れやレビュー観点の不足といった根本原因を特定し、次回以降のプロセスへ改善策として組み込むことが、PMに求められる品質マネジメントの姿勢です。 この動画を見る意義は、平成29年度春期プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問3を通して、午後Ⅰ特有の読解と答案化の技術を、品質管理の実務論点に結び付けて習得できる点にあります。テスト方式の基本用語を答えるだけでなく、欠陥摘出タイミングが手戻りと効率に与える影響を説明し、品質データを根拠にリスクを語り、分析結果から次の改善策を具体化するという一連の流れを押さえることで、他年度の品質管理・テスト改善の問題にも再現性高く対応できるようになります。