www.youtube.com 令和3年度春期システムアーキテクト試験午後Ⅰ問2は、運送会社K社の配達情報管理システムを題材に、既存の業務フローとシステムの保持データの限界を正確に読み取り、その制約の中で顧客要望を満たす新機能と業務プロセスを整合させて設計できるかを問う問題です。ポイントは、単に通知機能や変更受付機能を追加するのではなく、配達予定時刻算出の前提となる入力情報をどこから得るか、既存の再配達受付の制約をどこまで流用するか、システムにない情報を現場判断でどう補完するか、そしてステータス管理を追加することでどの要望が満たせるのかを、論理的に一貫させることにあります。午後Ⅰとしては、設問が問う「ある情報」「ある条件」「なぜ人が行うのか」といった箇所で、資料の記述を根拠として過不足なく言い切れるかが合否を分けます。 設問1は、改善後の配達システムに追加される機能仕様を問うもので、配達予定時刻の計算と通知、配達条件変更の受付制約が中心になります。(1)で問われる配達予定時刻計算のために連携する情報は、配達端末からシステムへ送られる「あらかじめ決めた配達順序」と「配達時に使用する配達車両」の二つです。ここでの読解ポイントは、推奨移動経路を用いて予定時刻を計算する以上、単に配送先一覧が分かるだけでは足りず、巡回順序という論理順序が必要であること、さらに移動手段が自動車・自転車・台車のどれかによって移動速度や通行可能経路が変わり、到着時刻に直接影響するため車両情報も必須になることです。採点講評が指摘するように、本文の前提条件から「計算に必要な入力」を設計者として抽出できるかが評価されます。(2)の通知に関しては、届け先顧客の改善要望が「誰が来るのか分かるようにしてほしい」「依頼主が誰か通知してほしい」という内容であるため、配達予定時刻に加えて配達員の氏名と依頼主名を通知することが要件になります。ここで単に「配達員情報」とまとめると粒度が落ち、要望に対する解決策が曖昧になります。午後Ⅰでは、要望と通知項目を一対一で対応付ける読み取りが重要です。(3)の配達条件変更を受け付けない条件は、現行の再配達受付に存在する制約を新機能にも適用している点が肝になります。空欄aは配達希望日が当日、空欄bは配達希望時間帯の受付締切時刻経過後であり、当日かつ締切超過の場合は受け付けないという既存運用を、荷物到着前の配達条件変更にもそのまま持ち込む設計です。ここで重要なのは、システムだけで柔軟に受け付けられるように見えても、現場の配達計画や当日運行の制約がある以上、受付可能な範囲を業務ルールとして制限しなければ運用が破綻する、という現実を読み取ることです。 設問2は、システム改善後の配達業務がどう変わるかを問うもので、ステータス入力の追加による顧客体験の改善と、システムが保持していない情報を現場で補う設計、そして受取場所変更時の物理作業の発生が中心論点になります。(1)で、配達員が不在連絡票を投かんした際に端末から追加のステータスを入力することで実現できる改善要望は、不在連絡票を確認しなくとも再配達依頼ができることです。ここでは、「不在連絡済」という状態がシステムに即時反映され、届け先顧客へ通知されることで、紙の連絡票というオフライン情報を待たずに顧客が行動できるようになる、という因果関係を示せるかがポイントになります。単に「再配達依頼ができる」と言うだけでは、なぜそれが可能になるのかが欠けやすく、ステータス入力という仕組みの意味が薄くなります。(2)は、受取場所が担当区域外の場合に、配達員が自らステータス変更を行う理由が問われていますが、その理由は各配達員の担当区域が配達システムに登録されていないからです。ここが本問の典型的な“システムにない情報は人が補う”論点であり、設計上の割り切りを読み取れるかが重要です。担当区域は営業所ごとに別管理され、システムにデータが存在しない以上、システムが自動判定できず、現場で区域を熟知している配達員の判断に委ねる設計になります。午後Ⅰでは、このような「自動化できない理由」がシステムのデータ保持範囲に起因している点を明確に述べることが高得点につながります。(3)では、受取場所変更で営業所受取になった際のステータスと、営業所での作業内容が問われ、空欄cは営業所倉庫保管となります。加えて、当日の配達業務完了前に荷物を降ろして営業所倉庫に保管する作業が必要になります。ここでの難所は、現行業務では便の完了ごとに荷物を降ろさない運用がある一方、営業所受取に変更された荷物は顧客が来所して受け取れる状態にする必要があるため、帰還時点で倉庫に降ろして保管するという追加作業が発生する、という運用差分を読み取ることです。システムのステータスが変わるだけでは実態が追い付かないため、物理作業を業務プロセスとして明示する必要がある、という点がシステムアーキテクトとしての評価ポイントです。 採点講評の観点でこの問2を総括すると、最大の評価軸は、機能追加の目的が顧客要望にどう対応しているかを示しつつ、同時に現行運用の制約やシステムの保持データの限界を踏まえて“実現可能な形”に落としているかどうかです。配達予定時刻計算に必要な入力情報を抽出できているか、通知する情報が要望に直結しているか、受付不可条件が既存制約と整合しているか、ステータス入力が顧客行動をどう変えるか、担当区域データがないため人が判断するという割り切りを説明できるか、営業所保管のステータス変更が物理作業の変更を伴うことを押さえられているか、これらの論点を取り違えずに整理できれば、午後Ⅰとして非常に得点しやすい問題になります。逆に、一般論として「通知する」「連携する」「自動判定する」といった言葉でまとめてしまうと、資料の具体条件から外れて失点しやすくなります。 この動画では、令和3年度春期システムアーキテクト試験午後Ⅰ問2を、配達予定時刻算出の入力設計、通知項目の要望対応、配達条件変更の受付制約、ステータス入力による再配達依頼の前倒し、担当区域データ欠如を前提とした現場判断の組み込み、営業所受取への変更が生む物理作業とステータスの整合という観点で、設問の順に一貫した因果で解説します。配達業務のように現場制約が強い領域では、システムができることとできないことを切り分け、できない部分を業務プロセスで補完して全体として要件を満たす設計が不可欠です。この動画を見る意義は、正解を覚えることではなく、業務制約とデータ保持範囲から“実装と運用が回る”要件を導出する思考手順を身に付け、同種の午後Ⅰ問題に再利用できる設計読解力を鍛えられる点にあります。