www.youtube.com 本動画では、平成28年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問1を取り上げ、大学統合という経営環境の変化を背景に、業務および情報システムをどのように段階的に統合していくかというテーマについて、提供された資料に基づき丁寧に解説します。本問は「大学の業務及び情報システムの統合」を題材としており、ITストラテジストとして、単なる技術統合ではなく、組織・業務・ガバナンスを含めた全体最適の視点で計画を立案できるかが問われています。 問題の舞台となるA大学は、公立総合大学として、少子化や財政難といった外部環境の変化に対応するため、県内の看護大学および短期大学と統合することになりました。統合は二段階で進められ、第1段階では新法人としての業務を円滑に行うため、既存システムの改修を最小限に抑え、各大学のシステムを維持したままネットワーク接続やデータ連携で対応する方針が示されています。第2段階では、3年後を目途に学部再編と歩調を合わせ、業務とシステムを一元化し、クラウド基盤へ移行するという、より本格的な統合が計画されています。この二段階構成を正しく理解することが、午後Ⅰにおける読解の出発点となります。 設問1では、第1段階の暫定統合において、システムを大きく改修せずに新法人として必要な機能を実現するために、どのような準備や検討が必要かが問われています。財務会計業務に関する設問では、新法人として一元的な財務諸表を作成する必要がある一方で、各大学の財務会計システムは独立しており、勘定科目や予算科目も異なっているという前提が与えられています。ここで重要なのは、統合方針が「システム改修を最小限に抑える」ことであり、システムそのものを統合するのではなく、データの読み替えによって対応するという発想に至れるかどうかです。正解は、新法人の財務諸表と各大学の勘定科目・予算科目との対応関係を整理することであり、採点講評でも、業務見直しを抑えるという前提を踏まえて解答することの重要性が示唆されています。午後Ⅰでは、このように本文に書かれた方針を無視して一般論を書いてしまうと失点につながる点が典型的な難所です。 同じ設問1の中で問われるネットワーク工事に関する設問では、学術情報センタが管理しているのは基幹ネットワークのみであり、学部LANは各学部が独自に構築・運用しているという現状が示されています。全学のネットワーク機器を一元管理する計画を立てるためには、まず現状の把握が不可欠であり、学部LANの詳細なネットワーク構成情報が不足していることを指摘できるかがポイントになります。As-Isを把握せずにTo-Beを描けないという、ITストラテジストとして基本的な視点が問われている設問です。また、研究用LANに関する設問では、大学のネットワークポリシーに反する通信実験や外部ネットワークとの直接接続が行われているという、いわゆるローカルルールや例外的運用が問題として提示されています。ここでは、技術的な対策そのものではなく、研究用LANをどのような運用方針で扱うのかという運用ルールの検討が正解となり、ポリシーの厳格適用と研究活動への配慮というトレードオフを読み取れるかが読解のポイントになります。 設問2では、第2段階の完全統合において、システム再構築に伴って生じる課題や問題点が問われています。ネットワークシステムの認証機能を整備する設問では、全教職員および学生を対象とした認証基盤を構築するために、どの既存システムの情報を利用すべきかを考える必要があります。学生情報は学務システムに、教職員情報は人事給与システムにあるという業務システムの役割分担を正しく理解できていれば、人事給与システムの人事情報が正解であると導けます。続く電子メールアカウント管理の設問では、中央集権的な一元管理によって、臨時職員や非常勤講師のアカウントを適時に発行できなくなるという、現場の利便性低下が問題として問われています。ここでは、ITガバナンス強化に伴う副作用を読み取れるかがポイントであり、単に「管理が厳格になる」といった抽象的な表現ではなく、具体的にどのような業務上の支障が出るのかを本文に即して答える必要があります。さらに、学務システム統合に関する設問では、業務手順の統一が不十分なままシステムを統合すると、教務情報や学納金管理が複雑化するという問題点を指摘することが求められています。これは、業務統合を伴わないシステム統合の危険性を理解しているかを問う設問であり、ITストラテジストとしての視座が強く試される部分です。 設問3では、検討体制の見直し理由が問われています。当初は各大学の情報システム部門のメンバのみで検討チームが構成されていましたが、幹部からの意見を受けて体制を見直す必要が生じた背景を正しく説明できるかがポイントです。単に「意見が出たから」ではなく、学務・財務・人事といった業務システムの統合は業務手順の変更を伴うため、情報システム部門だけでなく、実際に業務を担う事務局職員の参加が不可欠であるという本質を理解しているかが、採点講評でも強調されています。午後Ⅰでは、このように設問の背後にある理由や意図を言語化できるかどうかが、合否を分ける重要な論点になります。 この問題全体を通じて一貫しているのは、ITストラテジストに求められる視点が、技術の選択や構成だけでなく、業務、組織、ステークホルダー、運用ルールまで含めた統合的な判断であるという点です。隠れたIT資産やローカルルールを把握する現状分析の重要性、業務部門を巻き込んだ検討体制の構築、段階的統合におけるリスクと制約の見極めなど、午後Ⅰならではの読解ポイントが随所に仕込まれています。本動画では、これらの論点を一つ一つ整理し、なぜその解答になるのかを本文と設問の関係から論理的に説明しています。 この動画を見ることで、平成28年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問1の理解が深まるだけでなく、ITストラテジスト試験全般に共通する午後Ⅰ問題の読み方、すなわち前提条件の押さえ方、段階的計画の捉え方、業務とITの関係性の読み解き方を身に付けることができます。単なる正解確認にとどまらず、出題趣旨や採点講評の観点から、なぜこの問題で差がつくのかを理解することで、今後の試験対策や実務にも直結する視点を得られる点が、本動画を視聴する最大の意義です。