www.youtube.com 本問は、投資対効果を適切に検証するために導入したステージゲート制度が、導入目的である投資対効果の検証、責任部署の明確化、環境変化への柔軟な対応を実際に達成できているかを、監査の観点で確認できるかを問うています。得点に直結するのは「制度がある」という説明ではなく、制度が形骸化しないための統制が設計・運用されていることを、具体的な確認事項と監査手続に落とし込めているかどうかです。 最初に押さえるべき確認点は、責任部署が明確になっているかという点です。過去の改修ではシステム部がシステムオーナになることが多く、投資判断や効果責任の所在が曖昧になりやすいという背景があるため、監査では「システムを利用して業務を遂行する主管部署がシステムオーナとして登録されているか」を確認対象として設定します。答案では、主管部署がオーナになっている事実をゲートシステム上の登録情報で確認するという形で書くと、監査対象と監査手続の関係が明確になります。 次に重要なのは、費用見積りの漏れを起こさせない統制があるかという点です。投資案件では機器費や開発費、運用費は意識されやすい一方で、利用部門の教育費用のように不足しがちな費用が見落とされやすいので、その代表例として教育費を挙げるのは妥当です。ただし監査としては「漏れている費用を当てる」よりも「漏れを防ぐ仕組みがあるか」を確認するのが本筋になります。したがって、監査手続としてはゲートシステムの登録項目が費用項目として網羅的に設計されていること、入力必須設定や妥当性確認のプロセスによって未入力や見落としが発生しにくいことを、画面・設定・規程・実績記録の閲覧によって確認した、と述べると監査らしい答案になります。 審査の透明性と一貫性に関しては、現場から「承認と条件付承認の違いが分からない」という不満が出ている状況が重要な手掛かりです。これは審査が主観的、または判断理由が説明できない状態を示唆し、制度がプロジェクト進行の阻害要因になり得ます。監査では、投資委員会がゲート審査を行う際の判断基準が明文化され、承認・条件付承認・否認の区分と条件設定の考え方が一貫して適用されていることを確認します。答案では、判断基準の存在だけでなく、審査記録に判断理由や条件が残り、説明可能性が担保されている点まで触れられると評価されやすくなります。 効果測定の時期については、完了直後に測れる効果もあれば、業務定着や利用拡大を経て遅れて現れる効果もあるため、一律の時期設定では投資対効果の評価が歪みます。監査としては、プロジェクトの特性に応じて効果測定の時期や測定方法が定められていること、そしてその時期に実際に測定が行われ、結果が記録されていることを確認します。答案では「案件の特性に応じた測定時期が定められていること」を中心に据え、運用面として測定の実施と記録の有無まで言及できると、統制設計と統制運用の両面が揃います。 最後に、審査の実効性を担保する要件として独立性が問われます。審査が当事者の都合で甘くなれば、ステージゲートは単なる儀式になり、投資の是非を見極める機能を失います。したがって監査では、プロジェクトに利害関係を持つ者が審査に関与していないこと、または関与する場合でも適切な牽制が働く体制になっていることを確認します。答案は「利害関係者が審査に関わっていないこと」を端的に書き、必要に応じて審査体制や委員の役割分担、議事録などの証跡で確認したという形にすると、監査要点としての説得力が増します。 全体として、この問題で求められている監査視点は、個別のミス探しではなく、見積り漏れや恣意的判断を起こさせない統制が制度として整備され、運用記録として残り、説明可能性と独立性を伴って機能しているかを確認することにあります。制度を「寄港地での検問」に例えるなら、次の航海に進む前に目的と資源の整合、判断基準の明確性、検問官の独立性が揃っているかを確かめ、難破を防ぐ仕組みとして機能しているかを監査する、という構図になります。