情報処理技術者試験解説チャンネル

応用情報技術者試験をはじめとする情報処理技術者試験の午後問題では、「過去10年分を確実に理解しているか」が合格ラインを左右するといわれています。当チャンネルでは、その10年分の午後問題を要点だけに絞り、約10分のコンパクトな解説としてまとめました。限られた時間でも効率よく学習を進められる構成です。

【動画解説】令和5年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ問3過去問題解説

www.youtube.com 本動画では、令和5年度春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3として出題された、アパレル製造小売事業者を題材とした問題について、出題趣旨、採点講評で重視されたポイント、そして合否を分けた読解上の論点を体系的に解説します。本問は、ITストラテジストに求められる「ITありきではなく、経営課題と顧客ニーズを起点にして新たなビジネスプロセスを構想する力」を正面から問う、午後Ⅰらしい良問です。 問題の前提となるM社は、アパレル製造小売事業者として長年事業を展開してきたものの、会員アンケートの結果から、購買体験や商品提供の在り方に対する不満が顕在化し、経営状況の悪化が懸念されていました。この状況を踏まえ、本問では「新たなビジネスプロセスを構築することで何を達成しようとしているのか」を最初に読み取れるかどうかが重要になります。設問1の正解が示す通り、目的は売上拡大や話題性の向上といった表面的なものではなく、経営状況の悪化を防ぐことにあります。午後Ⅰでは、このように問題文全体を貫く経営目標を見誤ると、その後の設問で一貫性のない解答になりやすく、ここが最初の読解上の分かれ道になります。 設問2では、新たなビジネスプロセスを実現するために活用すべきM社の強みが、商品開発面と生産面に分けて問われています。ここで採点講評でも指摘されている通り、多くの受験者が両者を混同しがちでした。本問で求められているのは、バリューチェーンを意識した整理です。商品開発面の強みは、流行を的確に捉えた商品開発ができる若手デザイナーの存在であり、生産面の強みは、短納期で多品種少量生産に対応できる自社工場です。単に「強みを挙げる」のではなく、それがどの業務プロセスに属するのかを正確に切り分けて表現できるかどうかが、午後Ⅰでは問われています。 設問3では、ITを活用した具体的な施策と、その背景にある顧客ニーズの理解が焦点になります。候補デザインに対して多くの投票や感想を集めるために、ポイント付与というインセンティブ施策を用いる点は一見すると分かりやすいですが、重要なのは「なぜその施策が必要なのか」を問題文から論理的に導けているかどうかです。会員参加型の商品企画を成立させるためには、能動的な関与を引き出す仕組みが必要であり、そのためのIT活用としてポイント付与が位置付けられています。 さらに難所となるのが、データ分析基盤に実装された機能の目的を問う設問3(2)です。ここでは、感想データを分析して会員の好みを把握し、他の会員があまり購入していない商品をレコメンドするという、一見複雑な機能が示されています。採点で評価されるのは、この機能を「レコメンド精度向上」といった一般論で片付けるのではなく、「他人と異なるファッションに魅力を感じる会員のニーズを満たすため」という、問題文に明示された顧客像に結び付けて説明できているかどうかです。午後Ⅰでは、IT機能の説明ではなく、その機能がどの顧客不満やニーズに対応しているのかを読み解く力が合否を分けます。 設問4では、施策の実行計画とUX改善に関する判断力が問われます。施策を一定期間実施して投資効果を検証する理由については、経営会議で示された「投資は段階的に行う」という条件を正しく拾えているかがポイントです。単なるリスク管理ではなく、経営判断としての前提条件を答案に反映できているかどうかが評価されます。 また、モバイルアプリへの機能追加によって応えようとした会員のニーズについても、返品理由として挙げられている「想像していたイメージと異なる」という不満に着目できるかどうかが重要です。ここから導かれるのは、想像していたイメージどおりの商品を購入したいというニーズであり、UX改善の方向性を正確に読み取る必要があります。さらに、買い物カゴに関する通知メッセージの設問では、在庫データが分析基盤と連携しているという事実と、過去の購買体験における不満を結び付け、「在庫が少なくなっている」というタイミングでの通知が、品切れリスクを回避し、顧客満足度を高めるという意図を理解できているかが問われました。 本問全体を通じて難しいのは、IT施策を個別に理解することではなく、経営課題、顧客ニーズ、自社の強み、そしてIT活用を一本のストーリーとして結び付ける読解力です。午後Ⅰでは論述力以上に、問題文に書かれている条件や背景を丁寧に拾い上げ、それを設問の制約字数の中で過不足なく表現する力が求められます。 この動画を視聴することで、令和5年度春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3について、模範解答の丸暗記ではなく、なぜその解答になるのかという思考のプロセスを理解できるようになります。また、アパレル業界という題材に限らず、顧客参加型ビジネスやデータ活用施策が出題された場合に、どのように読解し、どの視点で解答を構成すべきかという汎用的な考え方も身に付きます。午後Ⅰで安定して得点するための読解力と構造理解力を高めるという点で、本動画を見る意義は非常に大きいと言えるでしょう。