ITエンジニアが仕事に対して思うこと

ITエンジニアとして働く中で感じたことを、現場の温度感そのままに言語化するブログです。設計・実装・運用のリアル、学び続ける負荷、品質とスピードのせめぎ合い、コミュニケーションの難しさなど、きれいごとだけでは語れない「仕事の実態」を整理します。誰かを責めるのではなく、なぜそうなるのかを構造で捉え、明日から少し楽に、少し強く働ける視点を提供します。新人から中堅、マネジメントまで参考に。

【動画解説】令和7年度 春期ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ問3過去問題解説

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令和7年度 春期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3は、オンプレミス中心の復旧方式から、クラウドサービス(Sクラウド)を活用した待機系システムへ移行することで、事故受付業務のITサービス継続計画(BCP/ITSCM)を実効性ある形に見直す力を問う問題です。単に「クラウドに移すと速く復旧できる」という一般論ではなく、RTO・RPO・RLOという目標を、現行運用の事実とテスト結果に基づいて具体化し、さらに緊急事態時に本当に回る体制と手順になっているかを検証・改善するプロセスまで含めて読み解けるかが焦点になります。午後Ⅰとしての読解ポイントは、計画書に書かれた理想論ではなく、平常時の運用実態、障害時の依存関係、クラウド事業者の前提条件、訓練で露呈したボトルネックを、設問の意図に沿って因果関係で説明することです。採点講評で評価されやすいのは、用語定義の暗記ではなく、どの時点がRPOになるのか、なぜ手順書が読めないと復旧に着手できないのか、クラウドに待機系を置いても「遠隔地保管」の方針が満たせないリスクは何か、テスト結果をどう目標値の合意に落とすのか、そして復旧判定やベンダ連携を誰がどのように担保するのかを、具体的に言語化できるかです。 設問1は現行のITサービス継続計画を、運用実態から正しく把握できているかを問うています。ここで典型的に差がつくのがRPOの導出です。毎日0時に損害調査システムのストレージデータをフルバックアップしているなら、災害時にバックアップから復旧したデータは「最後に取得したバックアップ時点」に戻るのが原則であり、被災当日の0時が目標復旧時点(RPO)になります。RPOを「直近バックアップ」など曖昧に書くと失点しやすく、バックアップ方式と取得時刻が与えられている以上、具体の時点で答え切るのが午後Ⅰの得点作法です。同じ設問1の文書管理システム被災時の対策は、復旧のクリティカルパスがデータそのものではなく「手順書の参照可能性」によって詰まるという、運用依存関係の読解が問われます。復旧手順書(Fファイル)がDC内の文書管理システムにしか保存されていない場合、DCが被災して文書管理システムが使えなければ、Sクラウドにバックアップデータがあっても復旧作業に着手できません。ここは「データがある/ない」の議論ではなく「作業開始条件が満たせない」ことが問題の本質で、対策は手順書をDC外に退避し、被災時に参照できるようにすることになります。Sクラウドへのバックアップと転送による保管、あるいは印刷物として拠点配備するといった答えは、いずれも「参照可能性」を担保する点で筋が通っています。午後Ⅰでは、対策案の提示だけでなく、なぜそれが必要かを「復旧手順が引けないと復旧できない」という因果で説明できるかが合否を分けます。 設問2は見直しの中核で、クラウド活用の利点を享受しつつも、クラウド特有のリスクと前提を見落とさない実務感覚が問われています。下線イでS社に確認すべきバックアップ運用は、待機系システムをSクラウド上に構築したとしても、その基盤が関西のS社データセンターという単一拠点に依存し、バックアップも同センター内にしかないなら、大規模災害や広域障害で待機系とバックアップが共倒れになる可能性が残るという点にあります。自社の方針が遠隔地保管であるなら、クラウド事業者が遠隔地バックアップを提供しているか、提供しているならその実態(保管先の分離、複数リージョン相当の隔離、復旧手段)を確認し、またSクラウド自体のRPO/RTOが自社要求を満たすかを確認する必要があります。ここで重要なのは「クラウドを使っているから安心」と短絡しないことで、クラウドのBCPが自社のBCP方針と整合しているかを検証する姿勢が、採点講評でも強調されやすい実務論点です。下線ウの「正式なRTOをテスト後に合意する目的」は、机上で設定した10時間以内という目標を、実際の切替えテストで得られた所要時間(例えば6時間)を踏まえて、実現可能性のある目標値として関係者間で合意することにあります。ここでの読解ポイントは、単に「テストで6時間だったから6時間にする」という結果追認ではなく、テストを通じて前提条件、作業手順、依存作業、必要なベンダ協力、要員配置が明確化され、それをもって「実現可能なRTO」として目標を固めるという、合意形成プロセスの意義を述べることです。ITサービス継続は、数値目標が独り歩きすると現場が疲弊し、実災害で破綻します。午後Ⅰで高評価になりやすい答案は、テスト結果を根拠にしつつ、目標を現実に着地させるための合意が必要だと筋道立てて説明できます。 設問3は代替運用フェーズにおけるRLOの設定で、平常時と緊急時でサービスレベルの考え方を切り替える能力が問われます。平常時の応答時間が5秒以内だとしても、Sクラウド待機系の制約下ではテスト結果として「事故受付リクエストの95%が10秒以内」という実測値が示されるなら、緊急時の許容レベルとして、その水準をRLOに設定するのが合理的です。合否を分けるのは、RLOを単なる「遅くてもよい」という感覚論で捉えず、緊急時に業務を継続するために許容できる品質を、定量的に定義して関係者に説明できるかです。95%という割合条件を落としたり、平常時の5秒目標のまま書いてしまうと、問題文のテスト結果を根拠にした設計判断ができていないと評価されやすくなります。午後Ⅰでは、与えられた測定結果を「緊急時の現実的な目標」として文章化する力が得点に直結します。 設問4は緊急事態発動時の体制整備で、計画と技術が整っていても、人と組織の動きが定義されていなければ復旧は成立しないという実務の要諦が問われます。空欄aで自動車保険部へ依頼すべきことは、システム担当がインフラやアプリの稼働を確認するだけでは「業務が回る」ことの保証にならないため、損害サービス拠点および本社での業務面の復旧確認、すなわち事故受付業務として実際に処理が遂行できるかをユーザ部門に確認してもらう点にあります。ここを「稼働確認」などIT部門内部の観点で書くと、業務復旧の判定主体を取り違えた答案になりやすく、採点上不利になります。下線オでS社に要請すべき体制面の内容は、訓練の結果、データ回復作業の一部でS社担当者との連携が必要であることが判明している以上、実災害時に担当者不在や連絡不能がボトルネックにならないよう、S社担当者の緊急事態対応訓練への参加、あるいはデータ回復作業を実行できる体制の確保を明確に求めることです。ここでの合否を分ける論点は、クラウドを使うほど「ベンダに任せればよい」と誤解しがちだが、実際には復旧手順の一部がベンダ協力を前提に組み込まれているなら、その協力を契約・訓練・体制の三点で担保しなければRTOは守れないという点を、筋道立てて説明できるかです。 この問題全体を通じて、出題趣旨は、ITサービス継続において計画策定だけで完結せず、検証(テスト/訓練)を通じて実効性のギャップを見つけ、目標値や体制を改善していく一連のマネジメントを理解しているかを測ることにあります。読み解きの難所は、クラウド移行というテーマに引っ張られて技術構成の話に偏り、手順書参照やベンダ体制といった運用のクリティカルパスを見落とす点、RTO・RPO・RLOの用語を知っていても、与えられた運用事実やテスト結果から具体値として導けない点、遠隔地保管の方針とクラウドの単一拠点リスクの不整合を見抜けない点にあります。午後Ⅰでは、文章の精緻さが得点になります。例えばRPOを「被災当日の0時」と言い切れるか、RLOを「全件の95%が10秒以内」と条件付きで書けるか、RTO合意の目的を「実現可能な値とするため」と簡潔に因果で示せるか、といった部分で差がつきます。 最後に、この動画を見る意義は、令和7年度 春期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3を素材に、ITサービス継続計画をクラウド活用で見直す際に必ず踏むべき思考手順を、過不足なく身に付けられる点にあります。現行運用からRPOを導く読み方、復旧の前提条件として手順書や体制を捉える視点、クラウド事業者のBCPが自社要求と整合するかを確認する観点、テスト結果を根拠にRTOやRLOを実現可能な目標へ落とし込む方法、そしてユーザ部門とベンダを巻き込んだ緊急時体制の組み立て方までを一連の流れとして理解できれば、午後Ⅰの初見問題でも論理が崩れない答案を短時間で組み立てられるようになり、得点の安定化に直結します。