サイバーセキュリティフレームワーク(CSF)は、アメリカ国立標準技術研究所(NIST: National Institute of Standards and Technology)が開発した、組織がサイバーセキュリティのリスク管理を行うためのフレームワークです。CSFは、特に重要インフラ(エネルギー、金融、通信など)を対象に、サイバーセキュリティリスクを管理・軽減するためのベストプラクティスを提供することを目的としています。
CSFの構造
CSFは、コア(Core)、実施段階(Implementation Tiers)、およびプロファイル(Profiles)の3つの要素で構成されています。
1. コア(Core)
CSFコアは、サイバーセキュリティリスクに対応するための5つの基本機能に基づいています。これらの機能は、リスク管理プロセスの全体像を示し、組織が何をすべきかを体系的に理解する助けとなります。
- 識別(Identify): 資産、データ、システム、業務プロセスなど、サイバーセキュリティに関連する重要なリソースを把握し、リスクを管理するための戦略を策定します。
- 防御(Protect): 識別されたリソースに対してセキュリティ対策を実装し、サイバー攻撃や内部からの不正アクセスを防ぐための対策を実施します。
- 検知(Detect): セキュリティインシデントの発生を検知し、異常な活動や脅威を特定するための監視体制を整えます。
- 対応(Respond): 検知したインシデントに対して迅速に対応し、被害の拡大を防ぐための対応策を講じます。
- 復旧(Recover): インシデント後に業務を早期に回復し、被害を最小限に抑えるための復旧計画を策定します。
2. 実施段階(Implementation Tiers)
実施段階は、組織のサイバーセキュリティリスク管理能力を評価するための基準です。各組織がどのレベルのセキュリティリスク対応を行っているかを4段階で評価します。
- Tier 1: 部分的(Partial): サイバーセキュリティリスクの管理が一部のみ行われている。
- Tier 2: リスク対応済み(Risk Informed): リスクに対して対応がなされているが、プロセスが統合されていない。
- Tier 3: 繰り返し可能(Repeatable): サイバーセキュリティ対策が正式なプロセスに基づいて繰り返し実施されている。
- Tier 4: 適応的(Adaptive): 組織全体でリスク管理プロセスが最適化され、変化する脅威にも適応できる。
3. プロファイル(Profiles)
プロファイルは、組織が特定のリスクやビジネス目標に合わせてCSFをどのように適用するかを示すカスタマイズされたフレームワークです。現在のセキュリティ状態と目指すべき理想の状態を比較し、ギャップを埋めるための対策を立案します。
CSFの利点
- 柔軟性: 業界や組織規模を問わず、どの組織でも適用可能な柔軟性を持っています。
- リスクベースアプローチ: サイバーセキュリティリスクに基づいて具体的な対策を講じることができ、組織のリスク管理能力を向上させます。
- 統合的アプローチ: サイバーセキュリティをビジネス戦略と統合し、リスクと利益のバランスを取りながら効果的な管理を実現します。
まとめ
要素 | 概要 |
---|---|
コア(Core) | 識別、防御、検知、対応、復旧の5つの基本機能 |
実施段階(Implementation Tiers) | サイバーセキュリティ対応の成熟度を4段階で評価 |
プロファイル(Profiles) | 組織の特定のリスクや目標に応じてCSFをカスタマイズ |
CSFは、サイバーセキュリティのリスク管理を体系化し、効果的な対策を講じるための強力なツールとして、企業や政府機関で広く採用されています。